夢見たものは

■事前情報

時間:オンセで2~3時間程度

難易度:★★☆☆☆
KP難易度:★☆☆☆☆

【推奨技能】
・外国語
・図書館
・目星

【戦闘を避けたい方】
・聞き耳
・隠れる
・忍び歩き

【登場人物】

鳥羽優里香(7)
東京都のとある大学病院で療養中の少女。
父親から暴力を受けたことによる脳へのダメージで入院している。
普段からとてもおとなしい子で礼儀正しい。

一人称:ゆりか


鳥羽聡美(29)
銀行員。鳥羽大地から暴力を受けていた。
今は優里香につきっきりで看病している。


鳥羽大地(32)
無職。今回の事で虐待の件が明るみに出て現在留置所にいる。


謎の男
ニャルラトテップ。今回の黒幕。

 

■シナリオ背景

とある病院に寝たきりの少女がいる。鳥羽優里香、それが彼女の名前だ。
彼女は1年前、父親から暴力をうけて脳にダメージを負ってしまい植物人間状態になってしまう。
それでも尚彼女は意識の深層で「生きたい、もっと色んなものを見たい」と渇望するようになった。
その幼いながらも生への執着心に興味をもった老紳士のような見た目をした男が彼女に手を差し伸べる。

『それなら夢を見せてあげよう。その夢が幸せか否か、一時のものかはたまた永遠となるかは君次第だ。』
刹那、彼女の意識はホワイトアウトする。目覚めた先には真っ白な部屋があった。
毎日12時になるとどこからともなく老紳士が来て彼女に絵本や人形など望むものをなんでも与えた。
そしてある日彼女はこう言った。
「おじさん、私お友達が欲しい。そしてそのお友達とたくさんお外で遊びたいの。」

それを聞いた老紳士は形容し難い不自然な笑みを浮かべていた。

■ゲーム開始

4月15日。綺麗な桜が咲く頃。
探索者達は各々やることを終え就寝する。
そして、床に違和感を覚え、探索者達は目をさます。
そこは見覚えのない真っ白な部屋だった。辺りを見回すと部屋の中心に机、小さい扉が4つと大きい荘厳な扉が1つ、そしてその大きな扉の上には時計が飾られている。現在6時。
そして自分以外にも人がいることに気づくだろう。小さな女の子が見覚えのない老紳士の膝の上に座って絵本を読んでいる。

全員目を覚ましたことに老紳士が気が付くと、彼女を膝から降ろしこの場にいる全員に向けてこう言った。
「ようこそ選ばれし者よ。君たちには今からこの子と一緒にゲームをしてもらう。それぞれの扉で謎をとくと鍵が手に入る。
鍵を集めあの大きな扉を開け、通ることができればクリアだ!制限時間はあの時計で12時まで。時間になったらまた来るよ。諸君らの健闘を祈る!
…あぁ、その机にある人形は私からのプレゼントだ。くれぐれも壊さないように。」

そう宣言した老紳士は薄気味悪い笑みを浮かべ、スッと消えていった。
(SAN1/1d3)
そしてその後に少女があなた達の元に駆け寄り、「みんなで頑張ろうね!」と屈託のない笑顔で言った。

【KP情報】
・探索の目安は基本一時間。技能失敗で+30分程度のペナルティを目安にしてください。余程のことがなければ余裕で回れます。


・優里香はここで過ごす以前の記憶が無く、この場所が自分の家だと思い込んでいる。他の扉の先はおじさんに行ってはいけないと言われて行ったことがない。
・両親に関する記憶は持っていない。
・彼女は自分そっくりなガラスの人形を大切に持っている。
・PLが中々動かない場合優里香がランダムで扉の前に行き、ぴょんぴょんとドアノブに手をかけようとするが届かない。

■探索開始

机…固定されていて動かない。中央に紙切れが2枚と、探索者の数と同じガラスの人形が置いてある。
ガラスの人形はそれぞれの顔に薄気味悪さを覚えるほどにそっくりで精巧に作られている。
傍らの紙切れに1枚目には『魂は鏡の檻の中に』と書かれている。
2枚目には『・愛は裂かれ、真紅に包まれる。 ・知識の鍵は母子草の中に ・富は人を肥やし堕落させる ・過ちを繰り返し待つのは死である。』
裏には『鬼は魂を捕まえる。』と書かれている。

小さな扉…それぞれの扉に文字が書かれている。【ラテン語、もしくは外国語-30】に成功すれば訳すことが出来る。
1の扉…Gloria(富)
2の扉…Amor(愛)
3の扉…scientia(知識)
4の扉…Mors(死)

大きな扉…びくともしない。扉の前には小さな台座、中央に四つの何かをはめ込むようなくぼみがあり、くぼみにはそれぞれ記号【♠,♥,♦,♣】が振られている。
SIZ13以上の人は目線の先に「Si vos volo ut revertar in pace,Quaeso animam unam dedicent」と扉に書かれていることが分かる。
12以下の人は扉に目星で見ることが出来るだろう。
【ラテン語、もしくは外国語-30】に成功すると、「無事に帰りたければ、魂(生命)を一つ捧げなさい」と書かれていることが分かる。

【KP情報】
・基本部屋の探索に1時間。技能を使わずじっくり調べる場合30分程度かかるだろう。
・時間切れでEND4へ
・序盤で人形を割るキャラがいたらニャル様が再び登場させて復活させてあげても良い。
・探索者達が部屋に入ると宣言したら1d4を振り、出た数の扉に空鬼を配置させる。探索者は【目星】で見つけることができ、【隠れる】等で先手を打てる。空鬼は目星に成功すれば探索者を見つけガラスの人形めがけ鉤爪を使ってくる。奪われた場合、そのまま空鬼は次のターンにガラスの人形を持って逃げてしまう。HPを1以上削ればガラスの人形を落とし逃げる。

空鬼
ルールブックp173
マレウス・モンストロルムp51参照

■1の扉(お菓子の家:富の間)

扉にはGloriaと書かれている。

扉をあけるとそこには異様な光景があった。一階建ての家と近くに川が流れている。
家の外観は全てお菓子で出来ており、川も濁っているように見えるがよく見るとチョコレートの川である。

家の中には、クッキーとマカロンで出来た椅子と机、板チョコのクローゼットがある。机上にはチェリーパイと紅茶があり、まるであなた達を待っていたかのような雰囲気を醸し出している。
机には「残さず召し上がれ」と書かれたメモが置かれている。
チェリーパイを食べ終わると、お皿に[492]と書かれていることが分かる。

クローゼットの中には可愛い子供服がたくさんある。【幸運】【目星】に成功すればすぐに一つの服のポケットの中から小さな箱が見つかるだろう。じっくり時間をかけて探すなら技能を振らなくてもよい。
指輪など、アクセサリーが入るくらいの鍵の掛かった小さな箱である。3桁の数字を回す南京錠タイプ。
【鍵開け、もしくは492で解錠】開けると中にはGloriaとか書かれているガラス球が入っている。
もし、彼女にこの部屋の服を着用させる際着替えの様子を見ているのであれば、彼女の背中に痛々しい打撲痕があることに気づくだろう。

勿論優里香自身は見に覚えが全く無い。


【KP情報】
・解錠には虱潰しでやっても構わない。その際は30分程時間ロス
・お菓子の家は食べることができる。しかし、チェリーパイと紅茶以外のお菓子を2口以上食べた場合、この部屋を出た時に身体が重く感じる。
他の探索者は【目星】でお菓子を食べた探索者が見て分かるレベルで太ったと分かるだろう。(SAN0/1)
太った探索者はDEXに-2、回避に-10補正。

■2の扉(シルバニアファミリー:愛の間)

扉にはAmorと書かれている

扉を開けると、不思議な光景が広がっている。2階建ての家と井戸、そして約10体の自分たちと変わらない大きさの可愛らしい服を着た動物の置物がある。
動物たちは思い思いに集まり話しているかのように置かれている。
【目星、アイデア】に成功すればどのグループも基本3人で構成されており、家族のようで非常に微笑ましいなと感じる。そして、うさぎのグループだけ母親がいないことに気づくだろう。

優里香はここで他の動物たちをモフモフなど、自由に行動させてもよい。

1階はリビングになっている。キッチンの方には料理をしているお母さんうさぎが立っている。
キッチンの他にはダイニングテーブルがある。
テーブルにはメモがある。
(メモの内容【ラテン語】)
「Tonde collum Rabbit!」(兎の首を切れ)
2階はベッドが置かれている。ベッドの下を覗き込むと鋸を見つけることが出来る。

キッチンには料理道具がある。

母親うさぎの体を切ると切った部分から異常なくらいの赤があなた達の視界を奪うかのように部屋一面に飛び散りはじめる。
全てが赤に染まった空間が出来上がり、少し遅れて思考が追いついたあなた達は恐怖を感じるだろう。
(SAN1d3/1d4+1)

首には血で赤く染まったガラス球が埋め込まれている。
井戸の水などで汚れを落とせばAmorとガラス球に彫られていることが分かるだろう。

【KP情報】
・母親うさぎ以外の動物はモフモフだが、触っても作り物であることが分かる。温度は感じないだろう。
・母親うさぎは手触りが本物かのように毛が柔らかく、温かい。
・母親うさぎ以外を切っても血は吹き出さない。中身は元の素材(ポリ塩化ビニール)で詰まっている。

 

■3の扉(図書館:知識の間)

扉にはScientiaと書かれている。

扉を開けると、新聞や雑誌と大きな棚がたくさん並んでおり、見渡す限り所狭しと本がぎっしりと詰め込まれている。
どうやらここは図書館のようで、あちこちに検索用の機械も置いてある。
ここでは母子草、七草で検索をかけると、「春の七草」というタイトルの本が一件だけ引っかかる。その場所が表示される。
【ナビゲート】【図書館】成功で難なくたどり着くことが出来る。
その場所へ行くと、「春の七草」というタイトルの本が見つかるだろう。
手にとって見るとダミーブックの小物いれであることが分かる。振るとコロコロ音がなるだろう。
開けてみると一枚の紙と「scientia」と彫られているガラス球が中に入っている。

その紙は新聞の切り抜きのようで、一件の事件について書かれている。
2ヶ月ほど前の児童虐待事件の記事だ。
『被害者は鳥羽優里香ちゃん(7)
父親鳥羽大地に暴力をふるわれ、現在嵯峨山(さがやま)病院で入院中。
鳥羽優里香ちゃんは脳に重いダメージを受け、植物人間状態になっている。』

これを見た貴方は思い出すだろう。一緒に行動している女の子の名前が鳥羽優里香であるということ。
同一人物であれば、何故彼女は今もこうやって元気に動き回っているのか、思考が追いつかない。
SAN(0/1d3)

【KP情報】
・ここではラテン語の辞書など色んな物がある。
・「鬼」で検索をかけると空鬼という本が置いてあるということが分かる。
【図書館】成功でその場所に行っても空鬼というタイトルの本は見つからなかったが、
一冊だけ、真っ白なタイトルが書かれていない本が置かれている。
中には空鬼という鬼について書かれている。
『次元を超え様々な世界を行き来することができる怪物。
鉤爪を使い、目的のものがあればそれを器用に引っ掛けそのまま立ち去る。
視力と聴力が弱く、空間を把握するのに時間がかかるようだ。』
・トランプ、もしくは記号について検索した時に出る情報。
『ダイヤは通貨を意味する。ハートは愛。クラブは知識。そしてスペードは死を意味し、全てが目を背ける。』

■4の扉(鳥羽家リビング:死の間)

扉にはMorsと書かれている。

扉の前に立つと【聞き耳】をしなくても分かるような大きな男性の怒号が聞こえてくる。

扉を開けると、そこはリビングのような場所で、男性が女性に一方的に暴力を奮っている光景がそこにはあった。

部屋全体に【目星】成功でリビングの棚に二体のガラスの人形と小さい球体のモノが置かれていることが分かる。

優里香の動向に意識を向けている場合、彼女がキッチンの方に向かっていることに気づく。

気づくと優里香は奥のキッチンから包丁を取り出している。【DEX10と対抗】で彼女を止めることが出来る。

止められなかった場合は男性を後ろから滅多刺しにし始める。
何度も、何度も、彼が完全に動かなくなってもそれでも無表情で刺し続ける。
そんな異常な殺人の現場を見た探索者はSANチェック(1/1d4+1)

(※暴力を止めず約3ラウンド程度の時間が経過した場合。
刹那、ゴギンという普段耳にしない不穏な音が部屋に響く。
その方向を見ると、女性の首が折れ、ありえない方向を向き血涙を流している。
もう声を出すことはできないだろう。ただ口をパクパクとさせ、ヒューヒューと空気だけが抜けていく。
【アイデア】成功で『何故助けてくれなかったの』ということがひしひしと伝わる。
SANチェック アイデア成功者(1d3/1d4+1) アイデア失敗(1/1d3)
男性はあなた達目もくれずただただ呆然としている)

(両親のどちらかが死んだ場合)ガシャン、とリビングにあった棚の方からガラスが割れた音がする。
棚に近づいてみると(殺した数)のガラスの人形が粉々になっている。
そこにキラリと光る物がある。Morsと書かれている小さなガラス球がそこにあった。

【KP情報】
・鳥羽大地は聡美から引き剥がそうとすると怒号をあげ、標的が探索者達になる。戦闘開始。HP15 こぶし75 回避10
・優里香の突拍子もない行動は無意識から起こるもの。彼女の凶行を止めればはっと我に返るだろう。 この時も両親に関する記憶は思い出さない。
・聡美は助けた後もただ震えているだけで会話になりそうにない。情報は何も探索者に与えることはない。

■最後の扉

荘厳で大きな扉がある。扉の前には小さな台座、中央に四つの何かをはめ込むようなくぼみがあり、くぼみにはそれぞれ記号【♠,♥,♦,♣】が振られている。
SIZ13以上の人は目線の先に「Si vis ad securitatem redeat,Please consecraverant ad animam.」と扉に書かれていることが分かる。
12以下の人は扉に目星で見ることが出来る。
【ラテン語、もしくは外国語-30】に成功すると、「安全に帰りたいなら魂を一つ捧げよ」と書かれていることが分かる。

台座にガラスの人形を置くと、下にストン、と落ちる。覗きこむ場合、台座のあった場所に穴が開いている。
しかしその穴は終りが見えない。広大な宇宙を思わせる。SAN(1/1d3+1)
すると台座の穴がスッと閉まる。

窪みに全てガラス球をはめると扉からカチッという音が聞こえる。
扉は押せば開くだろう。
扉の先はとても眩しく、先を見ることができない。
あなた達は先に進むと次第に視界が開けてきた…

以下条件でED分岐

【KP情報】
・正しい鍵は♠…Mors(4の部屋),♥…Amor(2の部屋),♦…Gloria(1の部屋),♣…Scientia(3の部屋)
・適当に鍵を入れた場合でも扉は開く。取り外しは可能。

1.全て正しい場所に鍵をはめ込み、魂を捧げた場合。
あなた達は目覚めるといつもの場所で目が覚める。
とても不思議な夢を見ていたようだ。少し身体が重く気怠い。
後にあなた達は知るだろう。
(人形が割れた人たちの名前)が亡くなったということ。
【アイデア】成功であの夢を鮮明に思い出す(SAN1/1d3)

※優里香と母親が生存していて尚且つPLが優里香に会いに行った場合
ちょうどあの夢を見た後で優里香が奇跡的に目をさます。(その際もしかしたら母親は死んでいるかもしれない)
優里香はあなた達をみてこう話しだす。
「私、ずっと長い夢を見ていたの。その夢のなかで皆でゲームをしたんだ。
おっきな図書館でしょ、それにたくさんの動物がいてね…
その時ね、お兄さん(お姉さん)達が私を助けて外に連れて行ってくれたの!本当に…ありがとう」
彼女は眩しい笑顔でそう言った。

 

生還報酬 1d6
鳥羽優里香が生きている 1d3
鳥羽聡美が生きている 1d3

2.鍵の場所を間違えた場合。
今あなた達の目の前には目のないヒキガエルのような奇妙な生物が2d6体と最初にいた老紳士がいた
SANチェック(1d5/2d10+2)
老紳士はニヤニヤ笑いながら
「やれやれ…残念ながらゲームオーバーだ。君たちには期待していたんだけどね。」
あなた達は身体がすくんで動かない。瞬間目の前が暗くなり、体温が下がっていくのを感じる。
最後に見えた景色は奇妙な生き物が槍を持っている姿、そしてガラスが割れるような音だった。

BADEND

3.魂を何も捧げず開けた場合。
あなた達の目の前にニヤニヤしている老紳士と2体の奇妙なヒキガエルのような奇妙な生物がいる。
SAN(0/1d8)
老紳士はニヤニヤ笑いながら
「なるほど、君たちは実に面白い。これが最後のゲームだ。私達を振り切り、あの光の先へ行ければ君たちはゲームクリアだ。
…ただし、私達も邪魔はさせてもらうよ。」
と老紳士は自分の背後にある扉くらいの大きさから漏れている光を指差す。
「それでは…ゲームスタートだ」

【KP情報】
・戦闘ラウンドと同様DEX順で行動する。
・DEX対抗に一回成功で敵の背後まで抜けられる。二回成功で扉にたどり着ける。
・勿論殴ることはできる。
・ムンビA→DEX10 HP20 ムンビB→DEX13 HP17 二体とも槍は共通で30% 1d10+1+1d6

抜けた場合END1へ描写移動

4.魂を持ち帰らなかった場合。
貴方の意識は真っ暗闇に落ちている、身体の感覚はなく、魂だけ取り残されたような不思議な感覚に包まれる。
そしてそれはいつまでも覚めることもなく、漂い続けるのであった。
【補足】魂だけが宇宙空間に取り残されている。身体は現実世界にあり、体温などはあるが、中身はからっぽである。

5.時間切れ
時計から鐘の音がなる。
それと同時に老紳士があらわれる。
「君たちには期待していたんだけどね…残念だが、ここでゲームオーバーだ。」
と言って指を鳴らす。その瞬間ガラスの人形が割れる。
あなた達は意識が遠のき暗い闇に飲み込まれるだろう。
BADEND

【補足説明】
・アーティファクト「ガラスの人形」…魂が収容されている。ガラスは鏡の原料なので、本シナリオではヒントとして鏡の檻という表現をしている。ソウルジェム的なもの。

・ニャルラトテップによって作られた空間には肉体は存在しない。よって、ガラスの人形さえ持ち帰ればそのキャラは生還できる。